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完全ワイヤレスを買ったらイヤーチップも交換しよう! 音も装着性も自分好みにカスタマイズ

イヤーチップ11モデルを聴き比べ!

井田 有一
2025年7月28日更新
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    井田 有一

完全ワイヤレスイヤホンのフィット感をもっとよくするアイテムがイヤーチップです。音質にも大きく影響するので、グレードアップのお供にどうぞ!

装着性だけでなく「音質」も変化する!

皆さんはイヤホンを購入して、イヤーチップ(イヤーピース)を交換したことがあるでしょうか。デフォルトのものが耳に合わない、イヤホンが耳からポロッと落ちてしまうという場合、交換を考えることもあるでしょう。しかし、「音質」や「遮音性」をグレードアップするために交換したというのなら、皆さんはもう立派なポタオデマニアです。
そう、イヤーチップで音が変化することをご存知でしょうか。そもそもカナル型のイヤホンは音響設計の特性上、イヤーチップでイヤホンを固定して外耳道を密閉することを前提にして設計されています。音に関係するのは固定ではなく「密閉」の方で、正しく密閉できていないと耳とイヤーチップとの間に隙間ができてしまい、空気が抜けてしまいます。となると、体感としては低音の聴こえ方が弱く感じてしまうのです。イヤホンメーカーは、純正イヤーチップでチューニングしているので、メーカーが意図する音を楽しみたいならそこから選ぶほかありませんが、イヤーチップ交換はメーカー推奨の音ではなく、自分の好みの音を探していくオーディオの深い楽しみであり「沼」なのです。

イヤーチップを選ぶコツ

ではイヤーチップ沼にどっぷりと浸かってもらうために、トレンドの紹介と選び方を解説していきましょう。選ぶ際に確認すべきポイントは大きく3つあります。1つ目は素材。ほとんどのイヤホンに付属しているのがシリコンです。近年は肌に馴染む医療用シリコンを使って装着性を向上しているものもあります。もう1つの定番がフォーム。押しつぶしてから耳に挿入するタイプで、遮音性に優れます。低反発ウレタンなどを使う場合が多いですが、表面にコーティングが施されたものなどさまざまなグレードがあります。

  • 最も一般的なのはシリコンのイヤーチップです。シリコンゴムは柔軟で耳穴の内側に十分にフィットし、耐久性も高く汚れにくいという特徴があります。
  • もう1つの主流はフォームタイプのイヤーチップです。耳穴に押し込むと、耳の中で元の形状とサイズに復元しようとするため、装着してから少し待つとぴったりとフィットします。

2つ目はお手持ちのイヤホンの軸の太さです。イヤホンのノズルは直径3mm程度の細軸と4mm程度の中軸、カスタムIEMに多い5~6mmの太軸に大きく分類されます。多くは中軸ですが、イヤーチップの種類によって装着できない場合もあるので、事前にイヤーチップの内径などを調べてから購入しましょう。

  • 同じイヤホンでも、モデルによって軸の太さは異なります。左は太軸を採用した完全ワイヤレスイヤホン。右はシュア「SE215」で、直径3mm程度の細軸を採用しています。

そして3つ目に傘の高さ。完全ワイヤレスイヤホンのケースに格納できるかどうかに影響を及ぼすのでチェックしていただきたいです。

  • 完全ワイヤレスイヤホンのケースに収納する目的で、傘が小さい低背モデルも数多く登場しています。こうした低背モデルは浅めの装着性になるため、耳の奥までフィットできる一般的なモデルよりも高域は刺激的に聴こえるケースが多くあります。

JRの駅でも完全ワイヤレスイヤホンの紛失が多いと話を耳にしますが、音質のためにイヤーチップ交換をすれば必然的にフィット感も高まり、イヤホンも落ちにくくなります。イヤーチップ交換、ぜひトライしてみてください。

音の変化量を確認してみた!

次からは、定番と呼ばれるものから新作まで個性豊かなイヤーチップを実際に集めて、編集部員が音の変化量を確認してみました。レファレンスのイヤホンにはテクニクスの「EAH-AZ80」を使用。また、編集部員の耳は一般的なMサイズが合うため、試聴にはMサイズかLサイズを使用しています。写真の傾向表は純正のイヤーチップと比較して、音がどの方向に変化したのか、その傾向を示しています。個人的に印象的だったのは、「SednaEarfit XELASTEC II」と「nuon clear」。XELASTEC Ⅱは量感と解像感とをバランスよく備えた低域で、今回取材したなかでは解像度が最も上がる印象です。nuon clearは音場全体の見通しが向上。clearという名にふさわしく、音がビビッドになり、透明度も上がります。音の粒立ちが明瞭になるのは驚きました。

  • 左の音質傾向表は、純正のイヤーチップと比較して、高域と低域の印象がどちらよりに変化したのかを表しています。キラキラしていないイヤホンをキラキラさせるものではないのでご注意を!

AUDIO-TECHNICA「AT-ER500」

  • AUDIO-TECHNICA
    「AT-ER500」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥2,970/税込/2ペア)
    SPEC ●素材:形状記憶ポリマー ●サイズ展開:S/M/L

体温で形状が変わるアブソートマーを採用

イヤーチップとしては世界初となる、人肌で柔らかく馴染む素材「アブソートマー」を採用。体温に応じて、耳穴の形状にあわせて変形することで、余計な反発力を低減し、圧迫感が少なく装着できるといいます。

  • 「AT-ER500」の音質傾向表。

AZLA「SednaEarfit XELASTECⅡ」

  • AZLA
    「SednaEarfit XELASTEC Ⅱ」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥2,750/税込/2ペア)
    SPEC ●素材:形状記憶ポリマー ●サイズ展開:XS/S/MS/M/ML/L

体温で変形する第2弾も解像度重視!

2020年に発売された「SednaEarfit XELASTEC」を、新たに培った技術やノウハウによって改良した後継モデルです。初代と同様、ドイツのKRAIBURG TPE社の高品質なTPE素材を採用。熱を加えることで柔らかくなるTPE素材の特性により、耳に装着すると体温で柔らかくなり、耳に吸い付くように密着します。

  • 「SednaEarfit XELASTEC Ⅱ」の音質傾向表。

COMPLY「TOZシリーズ」

  • COMPLY
    「TOZシリーズ」
    ¥2,750(税込/1ペア)
    SPEC ●素材:フォーム ●サイズ展開:S/M/L

フォームの定番に楕円形登場

COMPLYの有線用イヤーチップのラインアップ「TZ」「TRZ」に2023年に新たに加わったモデル。多くの人の耳介は楕円形状になっていることが多いから、TOZでは楕円形状を採用。楕円形状の耳によりぴったりとフィットするといいます。

  • 「TOZシリーズ」の音質傾向表。

DIVINUS「VELVET」

  • DIVINUS
    「VELVET Ear Tips」
    ¥OPEN(参考価格¥1,090/税込/1ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:S/MS/M/ML/L

表面のエンボス加工でサラサラをキープ

韓国のイヤーチップブランド「DIVINUS(ディヴァイナス)」のシリコン製イヤーチップ。3年の歳月をかけて開発したという「Soft Velvetly Texture」を採用。表面にマイクロエンボス加工とマットコーティングを施すことでなめらかな質感を実現しています。また、エンボス加工の隙間から空気が抜けるので、良好なフィット感をもたらしてくれます。

  • 「VELVET Ear Tips」の音質傾向表。

FINAL「FUSION-G」

  • FINAL
    「FUSION-G」
    ¥3,480(税込/2ペア)
    SPEC ●素材:シリコン/フォーム ●サイズ展開:XS/S/M/L/XL

フォームとシリコンの2層構造を採用

超密度フォーム、「柔らかシリコン」、高弾性シリコンの3素材を組み合わせた「トリプルハイブリッド構造」を採用。傘の部分には遮音性の高い高密度フォームを、その内側には「柔らかシリコン」を採用することによって、シリコンタイプの装着性はそのままに、フォームタイプの遮音性を合わせ持ち、音の明瞭度を高めるとしています。

  • 「FUSION-G」の音質傾向表。

VICTOR「Spiral Dot Pro」

  • VICTOR
    「Spiral Dot Pro」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥1,980/税込/2ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:S/MS/M/ML/L

内壁の凹凸が増え、ナチュラルな音に

イヤーチップ内の反射音を拡散し、クリアなサウンドを実現するというビクター独自の音質向上技術「スパイラルドット」を採用したイヤーチップの最新モデルです。スパイラルドット技術はイヤーチップの内壁にスパイラル状にドットを配列するものですが、「Spiral Dot Pro」ではスパイラル状の凸形状を追加することで、全体の形状を改良したフォルムを採用。繊細な音のディテールの再現性を高めているといいます。

  • 「Spriral Dot Pro」の音質傾向表。

LEPIC「nuon clear」

  • LEPIC
    「nuon clear」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥3,132/税込/2ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:S/M/L

空間オーディオ対応で音場の見通しが◎

アクセサリーブランド「LEPIC(ルピーク)」の製品で、空間音響の強化を図ったイヤーチップです。ユニークな形状のサウンドウェーブドーム「SOME」を、シリコン層設計によってイヤーチップ内部に実装。これにより音の前後、左右、高低を自在に表現するとしています。本製品「nuon clear」は、迅速な応答性とクールな高域表現にフォーカスしてチューニングされたモデルです。このほか、「nuon boost」、「nuon boost&clear」も用意されています。

  • 「nuon clear」の音質傾向表。

MandarinEs「New Symbio W」

  • MandarinEs
    「New Symbio W」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥3,300/税込/3ペア)
    SPEC ●素材:シリコン/フォーム ●サイズ展開:XS/S/M/L/XL

シリコン傘の内側にフォームチップがある

ハンガリーのイヤーチップブランド「MandarinES」のイヤーチップです。シリコン製傘部の内側にオレンジ色のフォーム素材を収めたハイブリッド型イヤーチップ。伸縮性と柔軟性を向上させた新設計のシリコン素材を採用することで、旧製品よりも数段柔らかさが増し、装着性が向上したとしています。

  • 「New Symbio W」の音質傾向表

SpinFit「OMNI」

  • SpinFit
    「OMNI」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥1,422/税込/1ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:XS/S/MS/M/L/XL

3段階の凹みでさまざまなノズル径に対応

イヤホンのノズル部と接する軸の内側に3段階の凹みを設けていることで、さまざまなノズル径に対応するイヤーチップ。チューブは2層構造を採り入れており、外側は柔らかいシリコン素材で高いフィット感を実現。内側にはしなやかでありながら適度な硬さのシリコン素材を採用し、ノズルにしっかりとホールドできるように設計されています。

  • 「OMNI」の音質傾向表。

水月雨「清泉-Spring Tips」

  • 水月雨
    「清泉-Spring Tips」
    ¥OPEN(参考価格¥2,160/税込/3ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:S/M/L/XL

ラジアルサポートで傘を潰さない

FEA有限要素シミュレーションと実験を繰り返したことで導き出した音響学導波構造によって、中高域から高域にかけての共鳴を抑えて自然な高域再生を実現させたといいます。また、傘にモールドを設けて形崩れが起こりにくい「ラジアルサポート構造」を採用しているのもポイントで、音漏れを防ぐ効果もあるとしています。

  • 「清泉-Spring Tips」の音質傾向表。

日本ディックス「COREIR-AL ALLOY」

  • 日本ディックス
    「Pentaconn COREIR-AL ALLOY」
    ¥OPEN(直販サイト価格¥3,850/税込/2ペア)
    SPEC ●素材:シリコン ●サイズ展開:S/MS/M/L

アルミ合金をコアに使うバランス重視型

「Pentaconn」を開発する日本ディックスが生み出した金属コアを採用したイヤーチップ「Pentaconn COREIR(コレイル)」の第2弾モデルです。第1弾モデル「COREIR BRASS」ではコア素材に黄銅(BRASS)を使用していたところ、「AL ALLOY」では金属コア素材にアルミニウム合金(AL ALLOY)を採用しています。柔軟なシリコンで装着性を高める一方で、金属コアが開口部を一定に保つため、金属特有のサウンドも楽しめるといいます。

  • 「Pentaconn COREIR-AL ALLOY」の音質傾向表。