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Shokzイヤーカフ型イヤホン「OpenDots ONE」は音がいいのはなぜ?

完全対称配置ドライバー搭載、高音質の秘密を本社エンジニアが解説!

平野 勇樹
2026年3月10日更新
  • 平野 勇樹

対向配置デュアルドライバーだから低音たっぷり

 耳を塞がないオープンイヤー型イヤホンの先駆者といえば、Shokz(ショックス)。骨伝導方式で数多くの特許を持ち、ランニング愛好家をはじめとする多くのユーザーに受け入れられ、「ながら聴き」文化を牽引してきました。そんなShokzが満を持して投入した、骨伝導ではない、より普段使いしやすいアイテムとして開発した「イヤーカフ式」のイヤホンがこの「OpenDots ONE」です。

 クラウドファンディングで3億円超の支援を集めた、という事実だけでも注目ですが、もっと多く語られるべきことは「音のよさ」です。実はOpenDots ONEは、従来は不可能とされてきた豊かな低域を実現するために、イヤーカフ方式として世界に先駆けて「対向配置デュアルドライバー」を採用しています。おしゃれなルックス、軽快な装着スタイルとは裏腹に、オーディオファンも満足させる本格的なサウンドが楽しめるのです。

 筆者がそのあまりの音のよさに驚き、Shokzにメールインタビューを実施したところ、本機ならではの音響設計について非常に興味深い情報が得られました。

 OpenDots ONEの内部には、11.8㎜径のスピーカーが2基、向かい合わせに配置されています。これにより同サイズ単一ドライバー比で有効駆動面積を2倍に拡大、実質的に16㎜相当の駆動面積が確保され、低域出力は従来比で約+6㏈向上させたそうです。丸みを帯びたハウジング形状を保持しながら、最良の音響性能を引き出せる方法(Bassphere™ Technology)として、技術特許も取得しています。

 この構造は単に「ドライバーを2基搭載している」だけではなく、完全対称配置により振動の安定性を高めることに本質があります。

  • ドライバーの最大音響出力は、「有効駆動面積」と「最大リニア振動ストローク」に依存します。一体集成型のデュアルスピーカードライバーでは有効面積が大幅に増加し(試算では直径16mmの単一円形スピーカーに相当)、加えて完全対称配置の2ユニットが同期振動することで振動系の安定性が向上し、許容振動振幅(ピーク振幅)の上限拡大にプラスに働きます。これが低域出力の余裕につながります。イヤーカフ方式のように、小さな容積、かつ球形の容積で最大のパワーを引き出すことが必要なイヤホンにとって、合理的なドライバーになっています。低域を大音量で再生しても歪みにくく、結果として低・中・高域を無理なくバランスよく鳴らすことができます。だからオープンイヤーでありながら、沈み込みの深いベースラインを描き出すことができます。

 Shokzによれば、マテリアルの選定にも、ドライバー性能を高める秘密があるといいます。振動板のドーム部にはPEN、エッジ部には特殊PU素材を用いて、より大きな振幅に耐えられる性能を確保しています。磁気回路は内磁型方式を採り、N52グレードの高感度磁石を組み合わせることで、コンパクトながらも駆動力を損なわない設計となっています。筐体は非対称の球面形状と肉薄化を駆使して内部スペースを最大限活用し、重量わずか6.5gを実現しています。対向配置という大胆な構造を成立させながら、イヤーカフ方式として違和感のない装着性を維持している点に設計力の高さが表れています。

 なお、ドライバー以外の部分でも、OpenDots ONEにはサウンド体験を高める工夫が多数盛り込まれています。たとえば、サウンドポートを耳甲腔の壁面に向ける「反射増強効果」を取り入れた音響設計も独特です。これにより低域の量感と伸びを獲得しつつ、音漏れも防ぐ構造としているそうです。また、音量ステップごとに最適化した異なるEQカーブを用意し、常にバランスよく聴かせられるよう、ソフトウェア設計も工夫しています。単にハードに依存せず、ソフトウェアアルゴリズムまで含めて全体を磨き込んでいる点は、技術志向のブランドらしいこだわりです。ドルビーオーディオにも対応して、立体感と密度感を備えたサウンドステージを描き出すことも、「ながら聴き」を目的とするイヤーカフ方式として珍しいこだわりといえるでしょう。

 ちなみに、Shokzの音作りを支えているのは、熟練リスナー「ゴールデンイヤー」と呼ばれる社内メンバーです。彼らの主観的評価に加え、膨大な耳形状データベースに基づく検証により、幅広いユーザーに最適化されたチューニングが施されています。

    • ドライバーから放たれる音源と耳との距離と角度を最適化しています。耳に向かう音圧を比較的大きくし、逆位相の音波を使用して外耳道以外の方向への音圧を小さくする「DirectPitch™テクノロジー」も搭載しています。音漏れが驚くほど少ないことも特筆すべき点です。それでいてイヤホン本体はIP54の防塵防水設計となっています。

    軽快なフィット感とタフ設計も魅力、左右のイヤホンも自動判別

     もちろん、デザインや機能性にも妥協はありません。ちなみに肌に触れる部分のマットな質感も素晴らしいものです。なんとShokzは快適さを追求するためにシリコン素材まで自社開発しているという力の入れようです。さらに、イヤホンの左右を自動で判別してくれるので、どちらが右側か左側か、気にすることなく装着できる点も「普段使い」にうれしい要素としてです。

     さらにフック部分は1万回の折り曲げテストをクリアしているそうで、耐久性も申し分ありません。心地よいフィット感もこだわりで、クランプ力は5gf程度、ごく小さい力で支えられるといいます。

    • Shokz(旧AfterShokz)は米国発のメーカーで、骨伝導技術を使ったオープンイヤー型ヘッドホンで「ながら聴き」の文化を牽引してきました。研究開発から製造まで一貫して行う体制を持ち、オープンイヤー分野で世界中に4,300以上の特許を出願/保有しているという技術志向のブランドです。

    「ながら聴き」の音質の基準を引き上げるサウンド

     実際にOpenDots ONEの実力を試してみました。米津玄師『Plazma』は全帯域に音がぎっしり詰め込まれ、しかも1曲の中でピアノや電子音、ボーカルが混在し、遠近感もめまぐるしく展開されます。全帯域が高音質でなければ粗が目立ってしまう楽曲ですが、集中してスリリングな展開を楽しむことができました。

     スクリレックス『Rumble』は60㎐未満のサブベース帯域を多く含む楽曲で、ほとんどの耳栓型ではないイヤーカフ方式のイヤホンではスカスカの音になってしまいがちですが、本機はコンパクトなボディからは想像できないパワーで大健闘します。

     ボン・イヴェール『SPEYSIDE』は、多重録音したボーカルの立体感や左右に振りわけられたギターの弦の残響の広がり感、音数の少ない中に織り込まれた微細なニュアンスが聴きどころです。アコースティックな音色も違和感が少なく、ドライバーの素性のよさと絶妙なサウンドチューニングに驚かされました。「ながら聴き」のために設計されたアイテムでありながら、まったく音質に妥協が感じられません。

     OpenDots ONEは、オープンイヤーの快適性とイヤーカフ方式ならではのファッション性を兼ね備えながら、その心臓部に「対向配置デュアルドライバー」という革新的構造を宿した、極めて完成度の高い、オーディオファン必聴のアイテムです。「ながら聴き」文化の牽引役として、オープンイヤー型の限界を押し広げた挑戦の結晶といえるでしょう。

    SPEC

    SHOKZ
    OpenDots ONE
    27,880円(税込)
    SPEC ●通信方式:Bluetooth Ver.5.4 ●コーデック:SBC、AAC ●ドライバー:11.8mm×2: ●連続再生時間:最大10時間(ケース込み40時間) ●質量:約6.5g(イヤホン片側)、39g(ケース本体) ●付属品:充電用USB Type-Cケーブル