据え置きヘッドホンアンプを使うなら電源タップにもこだわりたいもの。でも、「一般の電源タップとオーディオ用と何が違うの?」と思っている方のため、電源アクセサリーでお馴染みのクリプトンに、オーディオ用電源タップのメリットを伺いました。
- 写真はクリプトンの電源タップ「PB-150」(¥42,900/税込)。上級機で開発してきたノウハウやパーツを投入した普及価格帯モデルです。同社の上位モデルである「PB-HR1500」と同様の2回路電源フィルター回路構成も採用しています。
電化製品がノイズを撒き散らしている
ヘッドホンアンプの取材を行った時、気づいたことのひとつは、アンプには電源が大事であるということです。オーディオは基本的に電気で動作するものだから、その上流にノイズが乗っていれば悪影響を及ぼしかねません。そこで電源タップ(電源ボックス)の重要性を再確認するために、この分野では深い知見のあるクリプトンを訪れ、その実際について聞いてみることにしました。
そもそも、電源タップとはピュアオーディオではお馴染みのオーディオアクセサリー。一般的には、電源ケーブルと電源ボックスを組み合わせて構成する方式となっており、プラグイン形式の電源ケーブルを交換することで、音質をよりグレートアップさせることが可能です。
まず、なぜオーディオ用の電源タップが必要なのか、クリプトンの担当者に尋ねてみると、あらゆる電化製品には、直流電流を交流電流に変換する「インバーター」や、電気機器を制御するためのチップ「マイコン」などが搭載されており、これらがスイッチをオンオフする際に発生する高周波のノイズ(スイッチングノイズ)を発生させ、電源ケーブルを通して、アンプにまで影響を与えてしまうという答えが返ってきました。オーディオ用の電源タップには、その悪影響を減らして音質向上をさせるための工夫が満載されているといいます。
- スイッチをオンオフする際に発生するスイッチングノイズは、あらゆる電化製品から発生されています。また、ACアダプターを採用する機器もスイッチングノイズを発生させています。これらのノイズは接続されたコンセントから屋内配線を伝わり、家じゅうのコンセントに伝わっているのです。
回路分離とフィルターでノイズを防ぐ
その工夫の一つ目は、電源回路を分けることで、機器間の相互干渉を防いでいます。一般的に、システムの系統によって電源の供給元を分けて、相互干渉を排除するのがオーディオのセオリーですが、そのセオリーを電源タップでも採用しているというわけなのです。
クリプトンの電源タップ「PB-150」を例にとると、電源回路が二系統に分離されていて、機器間の相互干渉を防いでいます。たとえば一つの系統は「大電流機器・高ノイズ機器」でPCやパワーアンプ用に使い、もう一つの系統は「小電流機器」向けでプリアンプなどが推奨されています。現在のソース機器はDACやPCなどデジタル機器がメインなのでそれ自体がノイズ源となりかねませんが、系統を分けることでその悪影響を減らすことにつながります。
そして、二つ目はノイズを吸収するフィルターを搭載していること。これにより、ノイズをフィルタリングして電気の流れをきれいにすることができるそうです。フェライトコアやバスタレイド、ファインメットなど、各社がノイズ遮断効果のある素材を厳選して使用しており、そこに各社の個性が現れます。これは話を聞いていて面白いと思ったのですが、昔のオーディオマニアはフィルターを通すことで音のエネルギー感も失われるとして、フィルターを嫌っていた時代もあったそうです。しかし、最近ではやはり家庭内にもLED光源をはじめとしてノイズがあふれているのでこの考えは変わってきたといいます。
さらに、外部からのノイズ混入を防ぐため本体が堅牢につくられているのも特長で、振動にも強い設計になっています。たとえばPB-150の場合には、高い剛性を誇る鉄シャーシが採用されています。
話は逸れますが、機器の電磁ノイズを抑制するには、電源タップ用のオーディオボード、たとえばクリプトンの「AB-PB1」をタップの下に敷くのも効果が感じられるとクリプトンの担当者は教えてくれました。AB-PB1の内部には鉄球が入っており、ボードでサンドするという構造を採用しています。鉄球が機器の電磁ノイズを防ぎ、鉄球自体が振動することで外部振動を吸収するのだといいます。
- 電源タップ用オーディオボード
KRIPTON
「AB-PB1」
¥11,000(税込)
電源タップ用のオーディオボード。クリプトンの他のオーディオボードにも用いられているオリジナル技術の「鉄球サンド」を採用。機器の電磁ノイズを防止し、その重量と鉄球の振動により外部振動を吸収するとしています。
音がクリアに晴れ上がり、空間表現はより広大に
取材では、入門者に好適というPB-150の下にAB-PB1をセッティングし、市販の電源タップとの比較を行いました。レファレンス機器として、Benchmarkのヘッドホンアンプ「HPA4」、Chord ElectronicsのDAC「DAVE」、そしてFinalの平面磁界駆動型ヘッドホン「D8000 Pro Limited Edition」を用いました。ソース機器はPCを用意してこれも電源タップに接続しました。
まず、市販の電源タップに繋ぎました。ここで自分の心情を明かすと、電源タップの試聴はアンプやヘッドホンを変えることに比べればおそらく差が小さいだろうと思ってはいました。そこでジャズの音のポイントであるピアノの音色やウッドベースのピチカートなど、比較試聴のポイントになる点をじっくりと聴き込んでから、PB-150へと繋ぎ替えて試聴しました。
そして曲のイントロを聴いた瞬間、あまりの音の違いに驚き、クリプトンの担当者に「これは先ほどと同じ音源ですか?」と思わず尋ねてしまったほどです。もちろん同じ音源でしたが、実のところ先ほど聴き込んだピアノやウッドベースのパートを待つまでもなく、イントロを一聴しただけで音がまったく違うのです。音が全体的にクリアに晴れ上がって、空間の描写もより広大になりました。硬さが取れ、楽器の音色が綺麗で端正になっています。電源タップでこれだけの音のクオリティの違いがあるのだと再認識できた興味深い試聴でした。





