3月21日(土)にe☆イヤホン主催のポータブルオーディオの試聴・体験イベント「ポタフェス広島」が開催されました。場所は広島県立広島産業会館の西展示館/第2展示室。広島での開催は11年ぶりということもあり、中国地方のファンが数多く押し寄せていました。そんなポタフェス広島の会場で、プレミアムヘッドホンガイドの井田が注目した7つのアイテム(+α)をご紹介します。
CONTENTS
・ ポータブルDACやアンプもじっくり試せた
・ Astell&Kern「PD20」、パーソナライズで新境地を拓くDAP
・ 水月雨「MOONRIVER 3」、据え置きにも使えるポータブルDAC上位機
・ TOPPING「E50II」、単品DACでセパレートを楽しむ
・ 音にあらためて驚いた!高級イヤホン2機種
・ ポタオデ環境をゴールしちゃうかもしれない!アンプとDAP
・ まだまだあるぞ!フォトレポート
据え置き型のDACやアンプもじっくり試せた
広島駅周辺にはエディオンやビックカメラを中心に大きな家電量販店があります。メジャーなアイテムはもちろんそこでも試すことはできますが、ちょっぴりマニアックなイヤホン/ヘッドホンの試聴環境までは十分だとはいえません。今回のポタフェスはそうした土地柄を考慮してか、有線イヤホンやDAPはもちろん、普段試聴が難しい据え置き型のDACやアンプなどを展示するブースが多いと感じました。
国内初お目見えの製品もいくつか見られましたが、そうした新作はXで当日ポストしましたので、ここでは実際の試聴インプレッションも含めて、個人的に気になったモデルだけを厳選して、深掘りレビューしていきます。
Astell&Kern「PD20」、パーソナライズで新境地を拓くDAP

- ポータブルオーディオプレーヤー
Astell&Kern
PD20
予価330,000円前後
1つめは、Astell&Kernの新しいDAP「PD20」です。PD20という型番だけ見ると、「PD10」の後継モデルのように見えますが、実際は別ラインの製品とのこと。価格は33万円前後で、発売は今春を予定しています。
そもそもPD10は新体制になったAstell&Kernが発売したファーストモデル。クレードルが付属するなど、据え置き利用を想定した設計も個性的でした。ではPD20は一言でいうと「ガジェット向け」でしょうか。
最もガジェットっぽいと感じたのは完全ワイヤレスイヤホンではよくある「パーソナライズ機能」の搭載です。製品には測定用のイヤホンが付属しており、左耳、右耳と個別に複数の周波数帯の音が聴こえるか、聴こえないかテストしてバランス調整を行うというものです。話し声の多いイベント会場では正確には測定できませんでしたが、テストしたところかなり補正されたグラフが表示されました。

- パーソナライズ後のグラフ。騒音のある会場で、また敢えて聴こえないふりをして測定してみましたが、かなり大きく補正してくれる結果に。

- 測定には付属のイヤホンを使います。決してリスニング用ではありません。
また「Audiosphere」という疑似空間オーディオ機能も初めて搭載されました。「Subtle(繊細)」「Balanced(バランス)」「Immersive(没入)」「Echoic(反響)」の4種から効果が選べます。これ以外にも低域、中域、高域の3つの帯域を個別にチューニングできたり、より細かいEQ調整ができたりします。アンプもA級動作、AB級動作、ハイブリッドの3種から選べるなど、自分の好みの音をつくれる機能が多数搭載されています。

- バーチャルで空間オーディオ再生する機能「Audiosphere」。

- アンプモードの切り替えは側面にある物理ボタンで行います。
一方で、アルミ筐体を採用しているので重さは313gと軽量で、持った瞬間「かるぅっ!」って声が漏れてしまったほどです。久しぶりに毎日モバイルしたくなる軽量設計はかなり好印象でした。

- 背面まで美しいデザインです。
アユートさんのブースは終日行列で、終了間際ギリギリにA級アンプの音だけ確認できましたが、Astell&Kernらしい澄み切った高いSNを感じさせる音がベースにあり、自然でクセの少ない音色も相まってモニター的な音だと感じました。ただこれはすっぴんの音。アンプの調整やパーソナライズ機能のON/OFFでも、音の変化がありそうなので、時間をかけて自分の好みに味を付けていくDAPだと感じました。
水月雨「MOONRIVER 3」、据え置きにも使えるポータブルDAC上位機

- ポータブルDAC
水月雨
MOONRIVER 3
予価28,980円
2つめは、水月雨(すいげつあめ)のポータブルDAC「MOONRIVER 3」です。水月雨の鄭社長は「通信が常時できないとサブスクが楽しめないからSIMカードが入らないDAPは作りたくない」というポリシーを持っていて、DAPではなくDACや、日本未発売ですがスマホも開発しています。
水月雨のポータブルDACは「暁 DAWN Pro2」などの安価でコンパクトなモデルのほかに、上位モデルとなる「MOONRIVER」がラインアップされています。本機はその第3世代です。
日本にはどこかサイバーパンクな雰囲気を感じるデザインの「MOONRIVER 2」から上陸。チタン筐体にブラッシュアップした「MOONRIVER 2-Ti」が現在も販売されています。3はこの2-Tiのルックスを踏襲しつつ、利便性とデザインを大幅に改良しています。
目立つのは前面に採用された大型のボリュームノブ。100段階の音量調整ができるほか、クリック式のボタンになっており、曲の再生や停止などができます。なお、背面はスケルトンで内部基板が見える一方で、水月雨アンバサダーの水月友希が描かれています。

- 背面デザイン。
DACチップはシーラス・ロジック製の「CS43198」を2基搭載。ヘッドホンアンプ部もDAC内蔵のアンプ機能を使わず、独立した2基のアンプチップを使い、出力は4Vrms/500mWという大出力でヘッドホン駆動もできるといいます。
機能的には、DSPを用いた音質チューニングをスマホアプリを使って行うことができ、アプリにはイヤホンに合わせた周波数特性のデータが公開されており、組み合わせるイヤホンのデータがあれば、ダウンロードして水月雨が推奨するEQを反映できます。また、このDSP機能のON/OFFは物理スイッチで切り替えが可能です。
音を聴いて最も印象的だったのは、分解能の高さです。まるでパラパラ炒飯のように、ひとつひとつの音がクッキリと美しく聴こえます。ダイナミックレンジも広く、制動が効いたサウンドなのですが、音の張り出し方がソフトなので強調感の少ない自然なサウンドだと感じました。音量調節も滑らかで、イヤホンの個性をうまく引き出すという意味で、優秀なポータブルDACです。
想定価格が28,980円ということもあり、ハイエンドDACの音がミドルクラスで実現した、と感じるような驚きがありました。一点、繊細すぎる一面もあるので、迫力を求める方はEQが必須になりそうです。購入前はその点に注意してください。
最後に、このサイズのポータブルDACであるにもかかわらずPD充電できます。使い続けたとき発熱が大きくなるか気になりますが、スマホのバッテリー消費が気になるシチュエーションでは嬉しい機能です。公式情報では「充電用」ということでしたが、「充電しながらだと音がよくなる?」と思い試したところ、低域の量感が増す印象がありました。これは心理的効果が大きそうですが、そうした点も含めてユニークな機能です。

- PD給電は側面にあるUSB端子で行います。
TOPPING「E50II」、単品DACでセパレートを楽しむ

- 据え置きDAC
TOPPING
E50II
予価35,000円前後
3つめは、昨年日本に本格的に上陸した中国のオーディオブランド、TOPPINGの新作据え置き型DAC「E50II」です。このブランドは小型で高性能、コストパフォーマンスに優れたDACやアンプで注目されています。DAC機能に特化したモデルであるためか、非常にコンパクトな設計が特長。価格は35000円前後。発売は3月下旬です。
心臓部のDACには旭化成エレクトロニクスのワンチップDACの最高峰である「AK4497S」を採用しています。輸入するMUSINの担当者によると、AK4497Sを搭載するDACの中ではかなり廉価なモデルになるといいます。
サンプリング周波数は最大768kHz、量子化ビット数は最大32bit。DSDはDSD256まで対応。LDACやaptX Adaptiveの受信にも対応しています。
またTOPPINGらしいのは、設定をスマホアプリで行えるだけでなく、かなりマニアックな設定までできる点です。一例を挙げると、特定の帯域の音を鋭くするQ値の設定まで行うことができます。ややこしそうでDACやアンプの知識がないと使いこなせそうにないと感じるかもしれませんが、スマホとUSBケーブルで接続するだけでも、いい音が再生できますので問題ありません。

- 入力切り替えもアプリで行います。

- プロモデルも展開するTOPPINGらしく、音の調整はかなり細かくできます。
設定はフラットの状態で、iBasso Audioのアナログアンプ「Kunlun」とiPhoneを組み合わせて試聴しましたが、アナログアンプの個性を素直に引き出す印象で、DACとしてかなり優秀なのがよくわかりました。特にKunlunが持つ弾むような躍動的な音、そうした魅力的な部分は残しつつ自然にDA変換していると感じました。近年、良質なアナログアンプが多く発売されていますが、ちょい足しで購入できるので、単体のDACを探している人には、良い選択肢だと思いました。

- 背面端子。白背景の文字が入力端子です。
ひとつサンプルモデルで気になったのは、iPhone 16 Proとつないで試聴をした際、ボリューム調整が不安定だったところです。6〜7割くらいまでボリュームを上げないと聞こえにくかったです。この点は代理店のMUSINさんも把握しており、ファームウェアで改善してもらうように要望は提出しているとのことでした。TOPPINGは海外通販サイトでは購入せず、サポート面も含めて日本の公式販売店で購入したほうが安心ですね。
音にあらためて驚いた!高級イヤホン2機種
Unique Melody「MEST FORTUNE」

- カナル型イヤホン
Unique Melody
MEST FORTUNE
価格未定
4つめは、Unique Melodyの世界200台限定有線イヤホン「MEST FORTUNE」です。売価は未定とのことでしたが、30万円超えの「MEST indigo」の後継モデルという位置付けで、円安の状況を踏まえるとかなりのハイエンドイヤホンに分類されます。発売日は未定です。
特長は片耳4種、合計10ドライバーを搭載すること。近年は「10ドラ」と聞いても驚きませんが、Unique Melodyは骨伝導ドライバーをいち早く搭載したブランドのひとつ。本機にも「UMハイブリッド骨伝導ドライバー」が3基搭載されています。これが他とは違う点です。

- カラーは赤のほか紫も用意。各色限定100台です。
その他は低域用にダイナミック型1基、中高域用にBAドライバーが4基、超高域用にEST(静電型)が2基搭載されていて、骨伝導は低域の表現と空間表現の向上に影響しているといいます。
そのためかサウンドは音に実在感があり、非常に艶があります。弦楽器の生々しさが絶品でした。BAドライバーを構成に含むとやや分析的な音になる傾向がありますが、骨伝導がそのタイトさを上手に包み込み、クラシックホールに響くリバーブ成分もとても美しく聴こえました。とはいえ、全帯域の音に過不足はなく、驚くほどバランスがよかったです。「高いイヤホンを聴いたな」という満足感がありました。
水月雨「Armature Art 24」

- カナル型イヤホン
水月雨
Armature Art 24
価格未定
5つめは、水月雨の有線イヤホン「Armature Art 24」です。BAドライバーのみ、片耳24基も搭載したモデルで、3Dプリンターでつくられた透明のシェル部からもドライバーがぎっしり詰まっているのがわかります。価格も発売日も未定です。
近年はハイブリッドモデルが多かったなか、BAのみに絞ったのは逆に新鮮に感じます。各帯域の構成もユニークで低域が16基、中域が4基、高域が4基とかなり低域側に偏っています。片耳12BAドライバー構成の弟モデル「Armature Art 12」は「4+4+4」のバランス構成なので、その特異さがよくわかります。
その点を水月雨の鄭社長に問い合わせると、「低域再生と空間表現にこだわってチューニングしたため」と回答があり、16基の低域ドライバーはモジュール化しているとのことです。
展示機はまだ開発サンプルで、ケーブル選定がまだ終わっていませんでした。会場では5種類のケーブルからどのケーブルが良いか、来場者にアンケートを取っていました。
5本のケーブル、すべてに共通していた音は、低域から高域まで非常に緻密でモニターライクなサウンドだということ。24基もあればクロスオーバーが気になりますが、音のつながりはかなりよく、ドライバーによるクセの少なさが際立ち、楽曲を選ばず使えるイヤホンだと感じました。とにかくスピーディーで、過渡特性も高いため、音の響きが自然に聴こえます。
モニター的な音ということは、派手さは控えめです。なのでどのケーブルにするか迷っているんだろうな、とは感じました。5種のケーブルは特に低域再生の印象が異なるものが多かったです。
ポタオデ環境をゴールしちゃうかもしれない!アンプとDAP
Burson Audio「Conductor Voyager」

- DAC内蔵ヘッドホンアンプ
Burson Audio
Conductor Voyager
実勢価格770,000円前後
6つめは、個人的に「びっくりしたな賞」をあげたい、Burson Audioの据え置きDAC内蔵ヘッドホンアンプ「Conductor Voyager」です。すでに発売されているモデルで、e☆イヤホンでの売価は770,000円(税込)です。
Burson Audioは、オーストラリアのメルボルン生まれのアンプメーカーで、2026年の2月に日本での取り扱い会社が変わり、このフラグシップモデルが上陸した形になります。
ESS9039PROをDACに採用し、IV変換やローパスフィルターの回路に独自のオペアンプを使います。A級アンプで駆動するなど、確かに謳い文句も魅力的ではありますが、Conductor Voyagerの魅力は「音」です。
一般的に鳴らすのが難しいとされる平面磁界駆動型を採用したMeze Audioの「ELITE」の音が、驚くほど躍動的にそして華やかに聴こえたことに、ただただ圧倒されました。いうなれば、全帯域の音のベースが一段上になったような、ヘッドホンが持つポテンシャルを見事に引き出してくれたという印象です。ヘッドホンアンプの旅も、これで終着点か・・・そんな気持ちもよぎりました。
とはいえ売価は77万円と高額。スペックだけ見ると、正直強く目を引くところはなく、情報も希薄なので存在感が薄いのも事実です。ただ、この音は一回聴いてもらいたいです。メーカーにこだわりを伺いたくなる素晴らしいヘッドホンアンプだと感じました。
EvoAria「EvoOne Ti」「EvoOne Cu」

- ポータブルオーディオプレーヤー
EVOARIA
EvoOne Ti/EvoOne Cu
予価1,200,000円前後
7つめは、超弩級のDAPが、EvoAriaの「EvoOne Ti」と「EvoOne Cu」です。2月に開催された「ヘッドフォン祭mini」で日本に初上陸したアイテムで、価格は約120万円を予定しているそうです。
Tiはチタンハウジングで、Cuは銅ハウジングです。ハウジングだけが異なるというわけではなく、DACなど主要パーツこそ共通ですが、細かな内部の設計が異なっているそうで、別モデルと理解するのが正解です。
そのDACは旭化成エレクトロニクス製の「AK4191EQ」を2基と「AK4499EXEQ」4基を組み合わせた構成。プリアンプ部にはNutube「6P1」を2基使い、出力段は半導体アンプを組み合わせるハイブリッド構成を採用しています。ただ、このモデルもスペックだけで判断してはいけないDAPの筆頭格です。なぜなら真空管から想像するウォームな印象はなく、どちらかというとクールな音だからです。
今回はTiとCuの音を聴き比べました。共通して感じたのは、非常に自然な音で繊細な表現が得意なDAPだということです。ライブ音源の女性ボーカルを試聴しましたが、ハスキーさはなく艷やかさが見事で迫真な表現です。駆動力が高い、という言葉では足りないくらいに抑揚表現が心地よく、目が覚めるくらいに音が鮮やかに聴こえます。
Tiはそうしたリアリティをさらに追求した印象で、これぞHiFiサウンドといいたくなる完成度がありました。一方Cuは、Tiよりも繊細さを追求したような透明度の高さが印象的でした。制動力をかなり効かせているようにも感じ、タイトで俊敏な音ともいえるかもしれません。
いずれも基礎体力は非常に高いものがあり、このDAPも買ったら買い替えは10年先かな、と思える魅力を持っています。
まだまだあるぞ!フォトレポート

- 上品な春らしいBowers & Wilkins「Pi8」の新色ペール・モーブ。
最後は、会場の熱気と充実の展示内容を伝えるフォトレポートをどうぞ!

- Bowers & Wilkins「Px7 S3」にも新色ビンテージ・マルーンが登場。

- Noble AudioのBluetoothトランスミッター「Sceptre」。LDACやaptX Adaptiveに対応。USB Type-Cの充電端子も搭載します。

- iPhone 16 ProにSceptreを付けた様子。少し幅が広めです。

- LDACなどの高品位コーデックにはつかえませんが、Sceptreには低遅延モード(ゲームモード)も搭載しています。

- 今夏発売予定のDarumaAudioの新作イヤホン「Ethereal II」。クセは少ないですが、音をクッキリと描くソース味の味付けで低音もパンチがあって楽しい音でした。価格は3万円前後を想定していて、ダイナミック型1基構成です。

- MUSINのオリジナルグッズ「MUSINヘッドホンショルダー」(5,940円)。

- カメラバッグを参考したという内部は、ベルクロセパレーターを移動すればヘッドホンのサイズも選ばず使えそうです。

- Fosi AudioのポータブルDAC「MD3」。画面に好きな画像を表示できたり、スマホの背面にマグネットで貼り付けられたり、利便性と遊び心がある個性的なヘッドホンアンプ。音も解像度の高いウォーム傾向で良好でした!

- Meze Audioの定番ヘッドホン「99 Classics」は第2世代に進化しています。デザインが一緒なのでわかりにくいですが、イヤーカップも大きくなっていたり、内部も刷新されていたりと大きく進化しています。

- ヘッドホンカバーを扱うEarProfitが参考出展した「norm(ノルム/仮)」。機(はた)どころの群馬県桐生市で製造を行うメイドインジャパン製品で、速乾などの機能性を持たせつつ、価格を抑えたモデルにしたいと改良を重ねているそうです。

- ヘッドホンではありませんが、EDIFIERのアクティブスピーカー「M90」も展示されていました。このモデル、eARC対応のHDMI端子を搭載しているのに価格は4万円台と驚異のコスパを誇るモデルです。
以上が、今回のイベントで見つけた面白そうなアイテムでした!

- 今回のご褒美。電光石火のお好み焼き、その名も「電光石火」。ごちそうさまでした。
