HIFIMANが誇る独自R-2R DACモジュール「HYMALAYA DAC(ヒマラヤダック)」を搭載するなど、徹底的に音質に特化した設計で注目される完全ワイヤレスイヤホン「Svanar Wirelessシリーズ」。シリーズ3作の選び方を鴻池賢三氏がナビゲートします。
音質にリソースを振り切った超個性派完全ワイヤレス
「Svanarシリーズ」は、HIFIMANが提案する「音質にリソースを振り切った超個性派完全ワイヤレスイヤホン」。ご存知の通り、完全ワイヤレスはケーブルに縛られない快適さが受けてメインストリームに上り詰めた経緯があります。しかし裏を返すとBluetooth SoCやサイズ、重量および低消費電力が優先され、音質面では利用できるコーデック、DACやアンプの性能が犠牲になりがちでした。価格も然りです。
こうした、オーディオマニアのフラストレーションに切り込んだ提案が「Svanarシリーズ」といえるでしょう。万人受けを狙わない潔さは、趣味人としても共感を覚えます。
- ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
HIFIMAN
「Svanar Wireless」
¥52,800(税込)
完全ワイヤレスイヤホンの常識を覆す高音質を追求したハイエンドモデル。R2Rラダー方式による独自のDACシステム「HYMALAYA DAC」、特殊メッキによる幾何学パターンで特性を最適化した振動板「トポロジーダイヤフラム」、その振動板を正確に動作させるAB級バランス駆動の「アンプモジュール」といった技術が搭載されています。
- ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
HIFIMAN
「Svanar Wireless LE」
¥31,550(税込)
Svanar Wirelessに搭載されている技術を継承しつつ、大幅なプライスダウンを実現した、ハイコストパフォーマンスなモデルです。ハウジング素材をカーボンファイバーからプラスチックに変更、高音質コーデックLDACとワイヤレス充電への対応を省略するなどによって、プライスダウンが実現されています。
- ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
HIFIMAN
「Svanar Wireless Jr」
¥15,250(税込)
Svanarシリーズのなかでも大幅なプライスダウンを実現した末弟モデルです。HYMALARA DACこそ非搭載ですが、HIFIMANイヤホンの代名詞であるトポロジーダイヤフラム、およびアンプモジュールは継承。加えて、LEでは非対応だったLDACにJrは対応しています。
Svanar Wireless 3製品の違いとは?
Svanarシリーズ3製品の概要と違いを解説しましょう。同シリーズのコンセプトを象徴するのが最初に発売された「Svanar Wireless」です。汎用のDACチップではなく、同社が磨きを掛けてきたR-2R DACモジュール「HYMALAYA DAC」を完全ワイヤレスに搭載して大きな話題となりました。LDACにも対応するフラッグシップモデルです。
「Svanar Wireless LE」は、モデル名通りSvanar Wirelessのライトエディション。LDACとワイヤレス充電を省いて大幅な低価格化を果たしました。
「Svanar Wireless Jr」は、Svanar Wirelessの資産を活用しつつ手に届きやすい価格が魅力です。HYMALAYA DACは非搭載ながら、LDACへの対応は見逃せません。
それぞれのプロフィールをご紹介しても、各モデルの違いはわかりにくいかもしれません。そこで、各モデルのスペックを一覧表にしたものを別掲します。
注目はHYMALAYA DACモジュールの有無。上位2モデルには搭載していますが、Jrは非搭載。ここはかなり大きなポイントで、音質のキャラクターも大きく異なります。Svanar Wirelessは解像度が高く、音場も清澄。高域が非常に美しく、弦楽器の再生などは絶品です。一方、Jrは低域をパワフルに鳴らすタイプです。また、振動板はいずれも独自の「トポロジーダイアフラム」を採用。詳細は非公開ですが、表面構造を適切に調整しているといいます。
- HYMALAYA DACは、R-2Rラダー形式という抵抗を用いたデジタル・アナログ変換方法を用いているのが特長です。そもそもR-2R形式は抵抗の品質差があると、期待した性能が出ないことや物理的に回路が大きくなってしまう反面、艶のあるHi-Fiサウンドが魅力です。HIFIMANはそうしたデメリットを克服し、メリットだけを抽出したDACモジュールを独自開発しました。
コンセプトは同じ! 音質には明確な差がある
では3モデルの音質性能やサウンド傾向はどうでしょうか?同じプレーヤーで比較試聴を行いました。最上位のSvanar Wirelessは、HYMALAYA DACが放つ鮮烈で躍動感あふれるサウンドが持ち味です。高鮮度でアナログ的なナチュラルさは、音質傾向云々以前に「いい音」と直感できるものです。ジャンルを選びませんが、主にハイレゾ音源を利用し、倍音を含むアコースティック楽器やボーカルのリアルな音色、奥行のあるナチュラルな空間の広がりを求めるユーザーにとっては、格別な選択肢になるでしょう。
LEはAAC接続が利用可能。AACの限界を感じてしまいますが、逆に本機の再生能力が高い証明でもあります。HYMALAYA DACならではと思えるナチュラルさは大きなアドバンテージです。
Jrも面白い選択。ノイズを低く抑えたまとまりのよい高音質です。LDACによる情報量の多さが滑らかで上質な表現に繋がり、元気さも併せ持っていて楽しめるサウンドです。下位モデルというよりは、「聴き慣れた高音質」という点で高く評価でき、コストパフォーマンスの高さは抜群に感じます。
3兄弟ともいえるSvanarシリーズ。選べる反面、迷いも生じそうです。音質最優先ならSvanar Wirelessで決まりでしょう。LDAC+HYMALAYA DACの鮮烈かつ躍動感に溢れるサウンドは唯一無二の価値を放ちます。iPhoneユーザーでLDACにこだわらない場合はLEがお買い得。HYMALAYA DACの恩恵もしっかりと感じられ、プレミアムな音楽体験ができます。予算が限られつつもSvanarのエッセンスを感じたいならJrが好適です。LDAC対応で実力も伴い、コストパフォーマンスの面でもおすすめできます。
リスニングスタイルに応じて選べるSvanarシリーズ。オーディオファンが注目すべき個性派製品です。
SPEC
HIFIMAN「Svanar Wireless」
●通信方式:Bluetooth Ver.5.2 ●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC ●ドライバー型式:ダイナミック型 ●ドライバー口径:非公開 ●連続再生時間:約6時間(ANC ON時/ケース込み約24時間) ●質量:約8.0g(イヤホン片耳)、約77.9g(ケース) ●付属品:イヤーチップ(シリコン:シングル S 1ペア/M 4ペア、ダブルフランジ M 1ペア、低反発:S 2ペア)、充電ケーブル
HIFIMAN「Svanar Wireless LE」
●通信方式:Bluetooth Ver.5.2 ●対応コーデック:SBC、AAC ●ドライバー型式:ダイナミック型 ●ドライバー口径:非公開 ●連続再生時間:約6時間(ANC ON時/ケース込み約24時間) ●質量:約8.0g(イヤホン片耳)、約82.5g(ケース) ●付属品:イヤーチップ(シリコン:シングル S 1ペア/M 4ペア、ダブルフランジ M 1ペア、低反発:S 2ペア)、充電ケーブル
HIFIMAN「Svanar Wireless Jr」
●通信方式:Bluetooth Ver.5.2 ●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC ●ドライバー型式:ダイナミック型 ●ドライバー口径:非公開 ●連続再生時間:約7時間(ANC ON時/ケース込み約32時間) ●質量:約8g(イヤホン片耳)、約83.7g(ケース) ●付属品:イヤーチップ(シリコン:シングル S 1ペア/M 4ペア、ダブルフランジ M 1ペア、低反発:S 2ペア)、充電ケーブル