VGP phileweb

製品レビュー

ガラス振動板を搭載したワイヤレスイヤホン! KENWOOD「GLASS Core Pro」「GLASS Core」レビュー|佐々木喜洋「この価格で、そこまでやる?」

ケンウッド80周年記念モデル

佐々木 喜洋
2026年7月27日更新
  • アバター画像

    佐々木 喜洋

最先端のポータブルオーディオを扱うブログ「Music to GO!」でもお馴染みのオーディオライター・佐々木喜洋さんが、「価格設定がバグっている!」と感じた技術的に尖ったアイテムとその理由を語り尽くす連載企画。第3回はKENWOODブランド80周年を記念して登場した完全ワイヤレスイヤホン「GLASS Core Pro」「GLASS Core」に注目します。

ガラス振動板をワイヤレスイヤホンで初めて採用した「GLASS Core」「GLASS Core Pro」

完全ワイヤレスイヤホンの音質向上に欠かせないのが、音をつくるキーとなる振動板の材質です。硬すぎるとキツくなりすぎ、柔らかすぎると音がボケます。軽さや弾力性も重要です。

昔からさまざまな材質が使われてきましたが、最近革新的な素材が生み出されました。日本電気硝子と台湾GAITの共同開発によるガラス振動板「Sonarion(ソナリオン)」です。

今回はその画期的な素材を完全ワイヤレスイヤホンで初めて採用した、KENWOOD「GLASS Core」と、上位機種である「GLASS Core Pro」の2機種をご紹介します。

  • ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
    KENWOOD
    GLASS Core Pro
    ¥OPEN(直販サイト価格49,940円)
  • ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
    KENWOOD
    GLASS Core
    ¥OPEN(直販サイト価格27,830円)

どちらも色づけ少なくハイスピードかつ高解像度、しかし音のキャラは異なる

これら2モデルの大きな差は、ドライバー構成と独自機能の有無になります。「Pro」ではガラス振動板とMEMSドライバーとのハイブリッド構成で、さらにバイアンプ駆動です。SBCやAAC接続など非ハイレゾコーデック接続時にハイレゾ相当に拡張する「K2テクノロジー」や「EXOFIELD」という独自立体音響再生技術を応用した空間オーディオモード、さらにパーソナライズ機能、これらもProには搭載されます。イヤホンやケースはGLASS Coreと比較すると大きいですが、その分、バッテリーもケース込みで約40.5時間(ANC ON時)とよく持ちます。

一方、スタンダードモデルのGLASS Coreはガラス振動板を採用したダイナミック・ドライバー1基の構成。独自機能こそ割愛されていますが、ノイズキャンセリング機能や8種のサウンドモード、低遅延モード、AI通話ノイズキャンセリングによるクリアな会話など、基本性能は非常に優秀です。イヤホンも幾分スマートになっており、ケースサイズはProとの比較で一回りコンパクトになっています。

  • 写真左がGLASS Core Pro、写真右がGLASS Coreのイヤホン部。イヤーチップは独自のリキッドシリコン製。
  • 写真左がGLASS Core Proで写真右がGLASS Coreのケース部

まず上位機種のGLASS Core Proの方を試してみました。アクティブノイズキャンセリング(ANC)は自然でよく効き、圧迫感も少ないと感じました。音質の試聴はiPhoneで行いました。

村上ゆきのジャズボーカル曲『Bang Bang』では、スパニッシュギターの弦を弾く音が鋭く立ち上がり、演奏の躍動感を鮮やかに伝えます。ボーカルは輪郭が明瞭で歌詞も聴き取りやすく、ウッドベースは豊かな量感を備えています。解像度が高く、背景に広がるホールの響きまで感じられます。特有の色付けは感じられず、ニュートラルな音色です。

この独特の音の鮮明さは、YOASOBIの『アイドル』のようなアニソンでも本領を発揮します。とても複雑な曲ですが、声の滑舌のよさがよくわかり、打ち込み音のアタック感も一際強く迫力があります。

  • GLASS Core Proには、音源をハイレゾ相当に拡張して再生する独自技術「K2テクノロジー」や独自の立体音響再生技術「EXOFIELD」を活用した空間オーディオモードを搭載します。

次に標準モデルのGLASS Coreを聴いてみました。同じ『Bang Bang』で比べてみると、やはり同様にギターの切れ味がよく、ホールトーンがかすかに聴こえる解像度の高さなど、共通のサウンドを感じます。こちらも着色感は少なく、音に余計な暖かさや冷たさは感じられません。

Proモデルと標準モデルの違いは、Proの方が低音、高音共に伸びがよくワイドレンジな再生です。そのため、標準モデルとProモデルを聴き比べると、標準モデルの方がボーカル重視の中音域主体で、Proモデルの方が高音域と低音域が派手なサウンドに聴こえます。このチューニング傾向は面白い試みです。これについては、また後で触れます。

そもそも、ガラス振動板ならではの音の特長とは?

ではガラス振動板は、このサウンドにどのように効いているのでしょうか?両機種に共通する特長は、歯切れがよく、音にスピード感があること、着色感が少ないこと、細かな音の抽出に優れていることなどです。

  • GLASS Coreはシングルダイナミック・ドライバー構成。

ガラス振動板の特性については、以前に取材で日本電気硝子の担当者に直接インタビューしたことがありますが、そこでわかったガラス振動板の素材としての特性はいくつかあります。第一に、音の伝達速度が非常に速いことです。ガラスの音速は紙の1.8倍もあり、金属系の振動板と比べても優れているほどです。このため、シンバルの音の立ち上がりを鮮やかに描き出し、ピアノの繊細なタッチのような瞬間的な音の再生に優れています。

第二に、不要な着色感が少ないということです。これにより、意図しない温かみや冷たさを抑えることができます。

第三に、軽量でありながら高い剛性を持つことです。ガラス振動板の重さは紙に近く軽いのですが、剛性は金属に匹敵するレベルにあります。「軽いのに変形しにくい」という特徴は、繊細なニュアンスの表現と力強い低音の両立を可能にします。

このように振動板の特性として他の素材のいいところどりをしたようなバランスのよさが、音の忠実度が高く、かつシャープで素早い音を実現するのです。

開発したKENWOODに訊いたところ、ガラス振動板の採用について以下のように答えてくれました。

「ガラス振動板の採用は、KENWOODブランドが掲げている音づくりの思想である原音再生を、完全ワイヤレスイヤホンで高いレベルで実現してくれます。ガラス振動板は、低域から高域まで情報量豊かに再現できるワイドレンジ性に加え、余分な残響が残りにくく、音の立ち上がりが速いという特長があります。そのため、にごりの少ない透明感、キレのあるアタック感、広がりのある音場表現を引き出しやすく、KENWOODの原音再生という考え方に非常に相性のよい素材だと考えています」。

これらは日本電気硝子から聞いた振動板の特性と、見事に一致しています。ガラス振動板だけでも十分なワイドレンジ性能がありますが、KENWOODではさらにその能力を高めるために、GLASS Core ProではMEMSドライバーを高域用として組み合わせました。さらに、高音域と低音域を独立して増幅するバイアンプ駆動を採用、迫力と解像度を両立したより高い音質を実現しています。これにより、先の試聴でのProモデルの華やかで派手なサウンドを説明できます。

  • GLASS Core Proは高域再生を担うMEMSドライバーをガラス振動板に加えたデュアルドライバー構成。

以上のことから、KENWOODの開発意図は見事に結実しており、GLASS CoreおよびGLASS Core Proの良好なサウンドを可能にしたといえます。

ガラス本来の魅力を感じるGLASS Core、さらに華やかさをプラスしたGLASS Core Pro

両機種に共通しているのは、ガラス振動板ならではの立ち上がりの速さ、着色の少なさ、そして細かな音まで見通せる高い解像感です。そのうえで、上級モデルのGLASS Core ProではMEMSドライバーとバイアンプ駆動を組み合わせることで、よりエネルギッシュで華やかなサウンドに仕上げられています。

一方の標準モデルのGLASS Coreは、ガラス振動板本来の魅力をより素直に楽しめ、自然でニュートラルな音づくりが印象的です。こちらは、より手頃な価格の選択肢となるでしょう。

近年、イヤホンの音質向上はドライバー構成やデジタル信号処理に注目が集まりがちですが、基本となる振動板そのものの素材を進化させることも、音を大きく変える重要なアプローチです。ガラス振動板「Sonarion」では、その可能性を改めて示したといえるでしょう。

製品プロフィール

ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
KENWOOD
GLASS Core Pro
(KH-CRZ100T)
¥OPEN(直販サイト価格49,940円)

SPEC ●通信方式:Bluetooth Ver.6.0 ●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC ●連続再生時間:最大12時間(イヤホン本体)、最大40.5時間(充電ケース併用) ●質量:約6.7g(イヤホン片耳)、約58.4g(充電ケース) ●付属品:イヤーチップ(S/M/MS/ML/L)、USBケーブル、充電ケース

ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン
KENWOOD
GLASS Core
(KH-CRZ90T)
¥OPEN(直販サイト価格27,830円)

SPEC ●通信方式:Bluetooth Ver.6.0 ●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC ●連続再生時間:最大13時間(イヤホン本体)、最大34時間(充電ケース併用) ●質量:約5.85g(イヤホン片耳)、約39.2g(充電ケース) ●付属品:イヤーチップ(S/M/MS/ML/L)、USBケーブル、充電ケース

【筆者プロフィール】
佐々木喜洋

テクニカルライター/オーディオライター。得意ジャンルはポータブルオーディオ、ヘッドホン、イヤホン、PCオーディオなど。海外情報や技術的な記事を得意とする。アメリカ居住経験があり、海外との交流が広い。ソフトウエア技術者で第一種情報処理技術者の国家資格を有する。ポータブルオーディオやヘッドフォンオーディオの分野では早くから情報発信をしており、HeadFiのメンバーでもある。個人ブログ「Music To Go!」主催。

Music to Go! ▷ http://vaiopocket.seesaa.net/
X ▷ https://x.com/music2go