「Bose Ultra Open Earbuds」は、耳を塞がないオープンイヤー型イヤホンのド本命です。耳を挟むように装着するイヤーカフ型で、ボーズ独自のノイキャン技術やビーム技術が凝縮されて搭載されています。ヘッドホンファンだけでなく、ガジェットファンも注目の一台の魅力に山本 敦氏が迫ります。
- オープンイヤー型完全ワイヤレスイヤホン
「Bose Ultra Open Earbuds」
¥39,600(税込)
カラーは全10色。上段左からブラック、ホワイトスモーク、サンセットイリデッセンス、中段左チルドライラック、中段中央の上サンドストーン、中段中央の下カーボンブルー、中段右ダイヤモンド60周年エディション、下段左からムーンストーンブルー、ルナブルー、ディーププラム。ルナブルーとディーププラムは限定色。
CONTENTS
・小さいけれど音は一切妥協しない!
・【音質】音の実体感があり熱量を感じさせる
・【装着性】人間工学に基づく設計だから疲れない
・【アプリの拡張性】自動で音量調整する機能も搭載
・COLUMN 「耳を塞がない」に挑戦し続けているボーズ
・SPEC
小さいけれど音は一切妥協しない!
耳を塞がないオープンタイプのワイヤレスイヤホンが元気です。老舗のボーズが発売した「Bose Ultra Open Earbuds」は、独自技術を惜しみなく載せて、通常のカナル型イヤホンのように濃厚なサウンドが楽しめる一台です。早速、詳細をレポートしましょう。
Bose Ultra Open Earbuds(以下、ボーズUOE)は装着スタイルがとてもユニークです。音の出口となるノズルを耳穴に挿入するのではなく、C 型の本体を両耳に挟み込むように固定します。ファッションアイテムのイヤーカフみたいな着け心地を想像してみてください。
サウンドはどのように聴こえてくるのでしょうか? ボーズUOEはいわゆる骨伝導方式のイヤホンではありません。超コンパクトなスピーカーを耳穴に近接させて、空気振動から生まれる音を聴きます。今では同じ空気伝導方式を採用するイヤホンも珍しくありませんが、ボーズUOEはオープン型なのに“音漏れ”が極端に少ないのです。その秘密を解く鍵はボーズ独自の「OpenAudioテクノロジー」にあります。
まずはイヤホンのデザインを俯瞰しましょう。本体は独自形状のドライバーを内蔵するスピーカー部と、システムICチップにバッテリーなどを内蔵するバレル(樽)部にわかれ、それぞれを柔軟に伸縮するFlexバンドがつないでいます。バンドは縮んだ形状を記憶しており、耳の前側にスピーカー部、後側にバレル部を向けて耳に挟み込むように装着します。イヤホンは耳に対して約45度の角度に向けられれば理想的ですが、耳の形は人それぞれに異なります。ゆえに45度の位置を基準として上下に少しずつスライドさせながら、フィット感と音の聴こえ方が最も安定する位置に着ければよいでしょう。片側イヤホンの質量は約6.5g。筆者は数時間以上着けっぱなしにしても痛みを感じませんでした。
- ドライバー部とバレル部をつなぐ「Flexバンド」が動く仕様になっています。このバンドは形状記憶仕様ですが、ボーズの厳しいテストをクリアした高耐久性のシリコン素材を採用しているので、グイッと動かしても問題ありません。
個性的なデザインのイヤホンを耳にしっかりとフィットさせたら、今度はボーズのOpenAudioテクノロジーが真価を発揮する番です。この技術のポイントは大きく2点あります。スピーカー部に設けられた2箇所のスリットに注目してみてください。
耳にイヤホンを着けた状態で、耳穴に正対する側のスリットから主に中高域の音が出ます。音楽や音声通話のキモとなる音の成分に指向性を持たせて、耳の奥にまでストレートに送り届ける。さらにイヤホンのスピーカー部の上側にある細長いスリットからは、低音域と音漏れを抑制する逆位相の音が同時に出力されます。高域から低域まで全体に音のバランスを最適化しながら、よほどイヤホンに耳を近づけなければわからないほど、音漏れを強力に抑えます。エネルギッシュな音を鳴らしながら、音漏れを防ぎます。ボーズによる独自技術の複合体がOpenAudioテクノロジーの正体です。
次の段落からはボーズUOEについてさらに解説を加えながら、筆者の音質や装着性に関連するインプレッションを報告しましょう。
- ボーズUOE の再生音は中高域と低域とが別々に出されています。中高域は写真左下の大きめの孔から出ますが、強い指向性を持たせるために内部では特殊な構造を採用しています。ホースの先を摘むと水圧が強くなるように、音の通り道を工夫しているといいます。これにはサウンドバーで培った「PhaseGuide 技術」が応用されています。
【音質】音の実体感があり熱量を感じさせる
ボーズUOEはクアルコムのSnapdragon Soundに対応します。aptX Adaptiveコーデックを選択すると最大48kHz/24bitの高品位なサウンドが楽しめます。もちろんiPhone、iPadによるベストなリスニング体験を引き出すAACコーデックのサポートにも抜かりはありません。
スマートフォンにつないで音楽を再生してみました。とても色濃く肉厚なサウンドです。ベースのリズムが鋭く力強いです。カフェや商業施設、電車の中など様々な場所で試してみても音楽が薄まることがありません。ボーカルや楽器の音像は実体感がとても豊かです。熱量も高いです。
Boseイマーシブオーディオにも対応します。先行するUltraシリーズのアクティブ・ノイズキャンセリングヘッドホン/イヤホンから搭載がはじまった、ボーズ独自の空間オーディオ体験です。完全に開放されたイヤホンの構造にも最適化したBoseイマーシブオーディオは、思わず息をのむほどに鮮やかな音場を描いてみせました。耳を塞がないスタイルなので、特に高さ方向に広がる音の開放感が心地よかったです。静かな環境で聴くクラシックのオーケストラ、ポップスのライブ録音の演奏などをボーズUOEで聴くと、他のイヤホンでは味わえない臨場感に触れられるでしょう。
- 低域は無指向性のため音漏れしやすいという特徴があります。そこでボーズは音漏れしやすい低域成分とその逆位相の音も同時に放出することで、ほとんど音漏れを感じないイヤホンを完成させました。このアルゴリズムの計算などに、ボーズのノイズキャンセリング技術が活かされています。
- 2023年秋に登場した「QuietComfort UltraEarbuds」で初採用された「ボーズ・イマーシブオーディオ」がボーズUOEでも採用されており、オープンタイプならではの音場再生ができるように独自設計されているといいます。アプリで音の定位を眼前に固定する「静止」と動かす「移動」とを選択できます。
【装着性】人間工学に基づく設計だから疲れない
ボーズUOEは、耳の外側にクリップする独自の装着スタイルなので、耳が痛くなりそうだと思うかもしれません。ですが、それは杞憂です。というのもボーズは「Aviation Headset」という航空機パイロット用のノイズキャンセリングヘッドセットを1989年に世界で初めて開発したメーカー。長時間のフライトでも快適に過ごせるように何十年も前から人間工学を研究し続けています。ボーズUOEでもその快適設計は活かされており、数時間使ったくらいでは痛みなど感じないし、装着している感覚も徐々になくなってきます。
また「ボーズ・イマーシブオーディオ」をオンにして使う際には、アプリから「イマーシブオーディオの調整」を済ませておきたいです。ユーザー各自の心地よく感じる装着状態にあわせて、イヤホンが内蔵するジャイロセンサーによりヘッドトラッキング機能の動作も含めてイマーシブオーディオ再生を最適化してくれます。
【アプリの拡張性】自動で音量調整する機能も搭載
モバイルアプリの「Bose Music」を使って、ボーズUOEをさらに自分好みに追い込むこともできます。まず左右のボタンはショートカットボタンになっており、イマーシブオーディオの切り替えや音声アシスタントのウェイクアップなどを割り振ることができます。ほかにもサウンドにアクセントを効かせるオーディオイコライザーを搭載するほか、便利なのは「Auto Volume」機能。アプリでON/OFFできますが、これは周囲の環境ノイズの大きさにあわせて、イヤホンの再生音量を自動で適切になるように調整してくれるもの。意識しないでも常に適正なボリュームで音楽を楽しむことができます。今後、アプリのアップデートも期待できる実力派イヤホンです。
- アプリ「Bose Music」では、ステレオとイマーシブオーディオ(イマーション)を切り替える「モード」、「イコライザー」機能、イマーシブサウンドのオフ/静止/移動を切り替える「イマーシブオーディオ」など、6つのメニューを搭載します。
- ボーズUOEはイヤホン単体で最大7.5時間(※)の再生。ケース込みで最大27時間も利用できます。これなら一日中使えます。※ボーズでテストを実施(音量75dB SPLでオーディオ再生した場合)。バッテリー寿命は、設定や使用状況によって異なります。
- ボーズのサウンドバーに搭載される「Bose SimpleSync」に対応し、サウンドバーとイヤホンの両方から音が再生できます。リビングでサウンドバーを使い、キッチンで料理しながらボーズUOEを使う、といったシーンでも活躍するでしょう。
COLUMN 「耳を塞がない」に挑戦し続けているボーズ
ボーズによる“ 耳を塞がないポータブルオーディオ”は本機が初めての製品ではありません。2017年には肩に乗せて使う「SoundWear Companion Speaker」がアメリカで発売されました。いわゆる“オーディオサングラス”として親しまれる「Bose Frames」は2世代に渡り展開しています。それぞれの開発過程で蓄積したオープン型オーディオの高音質化技術と、音漏れの抑制に関してはボーズが得意とするアクティブ・ノイズキャンセリングヘッドホンの知見が合わさり、ボーズUOE の根幹を成しています。だからこそ本機はひと味も、ふた味も違うのです。
- 2018 年に発売された肩乗せウェアラブルスピーカー「SoundWear Companion speaker」。周りの音も聞きながら、スピーカーでサウンドも聴ける新しいデバイスとして注目を集めました。
- 2019年に発売されたサングラス型ウェアラブルオーディオデバイス「BOSE FRAMES ALTO」。一見オシャレなサングラスにしか見えませんが、フレーム部分にコンパクトなスピーカーを内蔵しています。
SPEC
「Bose Ultra Open Earbuds」
● 通信⽅式:Bluetooth Ver.5.3 ●対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive ●ドライバー⼝径:⾮公開 ●連続再⽣時間:最大7.5時間※(ケース込み最大27時間) ●質量:6.5g(イヤホン⽚⽿ )、44g(ケース部) ●付属品:充電⽤ケーブル ※ボーズでテストを実施(音量75 dB SPLでオーディオ再生した場合)。バッテリー寿命は、設定や使用状況によって異なります。