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最先端を切り拓くアジアブランドの全貌 第1回 【ブランド解説】DITA(ディータ)とは?|シングルダイナミックで音を極めるシンガポールの実力派ブランド

平野 勇樹
2025年7月24日更新
  • 平野 勇樹

アジア諸国は、いまやポータブルオーディオ業界を牽引する主役! 「最先端を切り拓くアジアブランドの全貌」では、いま知っておくべきアジアのオーディオ・ブランドを厳選。活気に満ちあふれた”メイドインアジア”の奔流を追います。第1回は、シングルダイナミックの可能性を突き詰めてきたシンガポールブランド、DITA(ディータ)にスポットを当てます。

  • ダニーとデズモンド、2人の幼馴染によって創設されたシンガポールブランド、DITA。人々の記憶に残る体験をデザインするべく、見た目も音も美しい崇高なイヤホンづくりに邁進し続けています。

人々の記憶に残る体験をデザインしたい

場所はシンガポール。物語はダニー・タン氏とデズモンド・タン氏が出会ったことではじまります。中学と高校の同級生だった二人は、社会人になって数年経ったある日、iPhoneなどで高品位な音を楽しめる可能性について話す機会があり、市場には自分達の理想とする音を奏でるイヤホンがなかったため、自分達で製品をつくることを決断。こうして2012年、DITA Audioが設立されました。なおブランド名は、二人の名前の頭文字(Danny Tan、Desmond Tan)をミックスしたものだそうです。
以降DITAは、優れた製品はそれ自体が体験であるという前提のもと、「崇高さ」を追求した製品づくりに励んでいます。

そんなDITAの特色を語る上で欠かせないのが、ダイナミック型ドライバーによるフルレンジという、イヤホンの原点ともいうべきシンプルな構成に設立当初からこだわり続けてきたことです。最近でこそ、ダイナミック型とBA型のハイブリッドイヤホン「Project M」(2023年)をリリースしましたが、Project Mを除く歴代モデルの全てがシングル・ダイナミック型というのは他に類を見ません。肝心のダイナミック型ドライバーも自社で開発することができ、初代モデルの「Answer」にはじまり、2017年当時のフラグシップ「Dream」ではマルチコート・マイラー振動板搭載10mmドライバーを、現在のフラグシップ「Perpetua」(2022)では12mm径の「Perpetua-Driver」を、最新モデル「Mecha」では10mm径の「LiMa-Carbideドライバー」を搭載するなど、歴代のいずれのモデルにも自社開発のダイナミック型ドライバーが採用されています。

また、ケーブルや内部配線にも設立当初からこだわっており、オランダの老舗ケーブルブランド・van den Hulのカスタムメイドケーブルを採用した「Answer Truth Edition」(2013)や、アメリカのケーブルブランド・Cardas Audioが提供する線材を内部配線および付属ケーブルに採用した「Project M」など、その例は枚挙に暇がありません。

設立から13年経ったいまも彼らの想いは常に一貫しています。パッケージを開けた時。身に着けた時。人々の記憶に残るような体験をデザインするために、DITAは邁進し続けています。

●こんなオフィス

DITAは、シンガポール本島のほぼ中央にあるアンモキオと呼ばれるエリアに本社を構えています。本社には、エンジニア、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、イラストレーター、アフターセールス担当、マーケティング担当、物流管理担当、総務・経理担当らが勤務しているといいます。

また、インハウスデザイナーを抱えているのが特徴で、このことによって、DITAのブランドイメージやデザインの一貫性を追求しています。製品を頻繁にリリースしないのも、ブランドに関連する要素やデザインを統一された形でユーザーに提供するべく、吟味を重ねているからだといいます。

  • JBLのスタジオモニター「4344M」など、世界中のオーディオの名機が並ぶ試聴室。
  • 多種多様なケーブルや電動ドライバーなどが置かれた作業スペース。

●キーマンはこの人!

創業者の一人、ダニー・タン氏。機械エンジニアリングを学んだ後、精密製造業に従事していましたが、デズモンド・タン氏との会話がきっかけでDITA Audioを立ち上げることになりました。

  • DITA代表取締役のダニー・タン氏。

まずはコレ聴いて! DITAの代表モデル

DITAの歴史のなかでエポックメイキングだったモデル、あるいは同ブランドの技術を象徴するモデルを、現行製品のなかからピックアップしてご紹介します。DITAを聴くなら、まずはココから!

●DITA「Perpetua」

ブランド10周年という節目に誕生したプレミアムイヤホン。「Perpetua」は「永遠」を意味しています。DITA Audioとして初めてドライバーに12mm径を採用しており、「PPT-D(Perpetua-Driver)」を新開発して搭載。内部配線にオーディオノート社の高純度銀線を採用しているのもユニークです。

  • カナル型・ダイナミック型イヤホン
    DITA
    「Perpetua」
    ¥428,000(税込)

●DITA「Project M」

DITAの新たな可能性にアプローチする「Projectシリーズ」の第3弾モデルで、ブランド初となる”Wハイブリッド“構造が話題になりました。樹脂の内部に金属筐体を内包するハイブリッド筐体を採用。さらにドライバーにおいても、9.8mmダイナミック型「PM ONE +」とBA型のハイブリッド構造となっています。

  • カナル型・ハイブリッド型イヤホン
    DITA
    「Project M」
    ¥49,800(税込)

●DITA「Mecha」

歴代フラグシップモデルの系譜を受け継ぎつつ、最新技術を盛り込んだイヤホンです。ドライバーユニットには10mm径の「LiMa-Carbideドライバー」を搭載。振動板は、軽量性と剛性を併せ持つリチウムマグネシウム合金製。初代「Dream」にはじまり、「Dream XLS」、「Perpetua」とフラグシップも系譜を継いできたチタニウム素材を、Mechaでも採用しています。

  • ダイナミック型イヤホン
    DITA
    「Mecha」
    ¥158,000(税込)