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製品レビュー

final究極のイヤホン「A10000」、ダイヤモンドを振動板に採用した理由とは?

全帯域にわたってピュアな音

野村 ケンジ
2026年10月6日更新
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    野村 ケンジ

ダイヤモンドという鉱物から、煌びやかな中高域を想像する方も多いかもしれません。しかし、その振動板は極めてクセがなくナチュラルな音で、むしろ低域表現に驚くかも?!オーディオ玄人にこそ聴いてほしい、ピュア志向のイヤホンです。

音響特性に優れる夢の素材ダイヤモンドをついに実装!

finalは多くのオーディオファンに衝撃を与えました。様々な振動板素材が登場するなか、何を隠そう、ダイヤモンド振動板を採用するイヤホン「A10000」の開発に成功したからです。


「振動板にダイヤモンド? それってどういうこと!?」となるのが普通の反応でしょう。しかもダイヤモンドライクカーボンなどのコーティングではなく、正真正銘のダイヤモンド素材で振動板が形作られているそうです。そんなことは可能なのでしょうか、また、そもそもダイヤモンドを採用するメリットはどこにあるのでしょうか。以前、そんな疑問を代表の細尾氏に投げかけてみたのですが、なるほどと、納得できる答えをもらうことができました。

  • 2025年の夏に開発が発表されたfinal「A10000」。そのタイミングで、神奈川県川崎市の本社で、代表の細尾氏から開発エピソードをお伺いすることができました。

「なぜダイヤモンドを振動板に採用しようと考え始めたかというと、音響特性に優れているからです。なかでも、音速が速いこと、内部損失が高いこと。実際、数値的にはベリリウムをも上まわっていますので、いつかダイヤモンド振動板のイヤホンを作り上げたい、と考えていました。実際、A10000の開発はおよそ6年前にスタートしていますが、ダイヤモンド振動板の製作が難航したため、先にA8000のほうが発売されることに。ベリリウム振動板の必須素材が入手困難となり、A8000が販売完了となるタイミングでA10000が完成したのは、とても幸運でした」(細尾)

大いに難航したというトゥルーダイヤモンド振動板の製造ですが、成形技術や固定方法など、いくつかのブレイクスルーが必要になったといいます。

「ダイヤモンドの振動板を作成するには、技術的な課題が幾つもありました。そのなかでも重要なポイントは成形技術と固定方法でした。まず、平面でなくドーム型に形成することが不可能だったのです。そこで様々な方法を検討、型のうえにダイヤモンド層を育成し、型を溶かして取り出したのちに不要部分をカットすることで完成できました。そのため「A10000」の振動板は表面がザラついた、裏面がつるっとした状態になっています。また、ダイヤモンドはとても硬い素材のため、割れやすいという弱点があります。試行錯誤を繰り返すことで、なんとか製品化に辿りつくことができました。

もうひとつ、振動板の固定についても大いに悩まされました。ダイヤモンドは比重が3・5g/cm³(ベリリウムは1・85)と高く、振動板の厚みも30ミクロンとなるため、A8000のベリリウム振動板に比べると、どうしても重くローリングしやすい、という弱点がありました。そのため、エッジ部分はかなり硬い素材が必要となり、これまで使用してきたものでは理想的な動作が実現できませんでした。そこでベンチャー企業に協力を仰いで様々な素材をテスト、2年間に及ぶ試行錯誤の結果、ウレタン系の新素材を採用することで完成に至ることができました。

ちなみに、ウレタン系素材は以前からスピーカーのエッジ部に利用されてきましたが、劣化の早さが問題となっていました。A10000ではそういった弱点を克服した、劣化しにくく軽量ながらも強度がある新しいポリウレタン素材を開発しています」(細尾)

 また、ボイスコイルも注目したいポイントです。一般的に、イヤホンでは接着剤等で形成する手法が大半ですが、精度の高さや音質的なメリットを考えてボビン巻きを採用、自社工場でボイスコイル部品も製作しているそうです。A10000にはかなり細いボイスコイル線を採用したかったそうで、CCAWであっても巻き付け時に折れてしまう可能性があり、ボビンにアルミ合金線を巻き付けて、理想的なボイスコイルを新たに開発していました。

圧倒的な歪みのなさが生む極めてナチュラルな音

 実際に聴いてみると、そのサウンドは、振動板同様に新境地と呼べるものです。これまで聴いてきたどんなイヤホンとも違う、圧倒的な歪みのなさが生み出す音の自然さ、空間的な広がりのスムーズさを持ち合わせている。まるで超弩級のピュアオーディオを聴いているかのよう。高域に意図的な尖りはいっさいなく、それでいて圧倒的な明瞭さ。低域も、いっさいの滲みのないフォーカス感の高さを持ち合わせている。おかげで、フルオーケストラの演奏がまるで会場にいるかのようです。バイオリンや金管楽器の艶やかさに目が奪われるいっぽうで、コントラバスの音色に深みや、ホール自体に鳴り響く音までしっかりと届き、全体が統一感のあるサウンドとなっています。指揮者がどんな演奏にまとめようとしているかまで伝わってきます。

驚いたのが、4s4ki『演者』を聴いたとき。音数が多く複雑な構成のうえ、〝汚し〟のためか強いコンプをかけているため、再生が難しい曲なのだが、全ての要素を細やかに、定位よく感じさせてくれる。正直、イヤホンでこんな音を聴かせてくれる製品に出会ったことがありません。

このように、A10000はダイヤモンド振動板ならではの特長を活かした、格別の音楽体験を楽しませてくれます。技術力の高さと音楽に対する思い入れ。この2つをもつfinalだからこそ生み出すことができた、貴重な製品といえます。(野村ケンジ)

トゥルーダイヤモンド振動板はココがすごい!

final「A10000」の「トゥルーダイヤモンド振動板」は、中央のドーム部分にダイヤモンド箔、エッジ部分に特殊ポリウレタンを採用しています。接着剤レスで分子間結合させる、これまでにない特殊成形技術によって、これらを組み合わせることに成功したそうです。ボビン付ボイスコイルも新開発で、スムーズなピストンモーションを実現させるポイントのひとつです。

振動板の素材や製造技術に創意工夫を凝らすことで、ダイヤモンド振動板を搭載した新開発ドライバーは、100Hz以下の帯域で従来モデルと比べて100分の1以下という驚異的に低い歪み率を実現しているといいます。ダイヤモンドという単語から想像される、トランジェントのいい繊細な中高域だけでなく、低歪みゆえのピュアな重低音域にも耳を澄ませてほしいです。

ダイヤモンドは、オーディオ素材として優れた物理特性を持っています。たとえば音速はほかの金属素材を越える18200m/sという数値。堅さも重要なポイントで、歪みにくくたわみにくいです。曲げ剛性によって変位が極めて小さく、振動板表面で発生するノイズを抑えます。内部損失が高いので付帯音も少ないことが特徴です。

製品プロフィール

カナル型イヤホン
final
A10000
オープン価格(直販サイト価格 ¥398,000前後)

SPEC ●型式:ダイナミック型 ●ドライバー口径:非公開 ●再生周波数特性:非公開 ●インピーダンス:13Ω ●ケーブルの長さ:1.2m ●付属品:イヤーチップ(FUSION-G 5サイズ、TYPE E 5サイズ)、キャリングケース、イヤーチップケース、MMCX ASSIST、メンテナンスツール、ダストフィルター、シリコンシート、筐体保護テープ、補助プレート

※この特集記事は2025年11月13日刊行の雑誌「プレミアムヘッドホンガイドマガジン」から転載、加筆されたものです。

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